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「1回30gが上限」「それ以上は無駄になる」——フィットネス界で20年以上信じられてきたこの神話を、2023年の研究が覆しました。
結論から言うと、この上限は存在しません。ただし、1回の摂取量によって筋たんぱく質合成(MPS)の効率は変化します。本記事では、最新の研究データに基づいて、1食あたりの最適なタンパク質摂取量を解説します。
「30g上限説」の起源と誤解
「1回30gが上限」という説は、初期のMPS研究の誤った拡大解釈から広まりました。Moore et al. (2009)の研究では、トレーニング後のMPSが約20gで最大に近づき、40gでは追加の筋合成が見られなかったと報告されました【1】。
しかし、この研究が示したのは「MPSの急性刺激が20〜25gで頭打ちになる」ということであり、「体が30g以上を吸収できない」ということではありません。吸収されたが筋合成に使われなかったたんぱく質は、酸化(エネルギー利用)、臓器のターンオーバー、免疫機能の維持、その他の代謝プロセスに活用されます。つまり「無駄になる」のではなく、筋合成以外の形で体に利用されているのです。
吸収と利用は別の概念
ここで重要な区別をしましょう:
- 吸収(absorption):消化管から血中にアミノ酸が取り込まれるプロセス。たんぱく質の吸収には上限はなく、時間をかければ大量のたんぱく質も消化・吸収されます。ホエイプロテインなら1時間あたり約8〜10g、カゼインなら約6g、卵なら約3gの速度で吸収されます【2】。
- 筋たんぱく質合成への利用(MPS利用):吸収されたアミノ酸のうち、筋肉の合成に使われる割合。これには1回あたりの「効率の上限」があります。
つまり、100gのステーキを食べれば、そのたんぱく質は最終的にすべて吸収されます。ただし、MPSの急性刺激は20〜40gの範囲で最大化されるため、「吸収」ではなく「効率」の問題です。
筋たんぱく質合成(MPS)の最適量
現在の研究のコンセンサスでは、1回あたりのMPS最大刺激に必要なたんぱく質量は以下の通りです。
- 若年トレーニー(18〜35歳):約20〜25g(ロイシン2.5〜3g相当)
- 中高年(50歳以上):約30〜40g(加齢による「アナボリック抵抗性」のため、やや多めが必要)
- 全身トレーニング後:約40g(下半身のみの研究より多めの値が報告されている)
Schoenfeld & Aragon (2018)のレビューでは、「1回あたり0.4g/kg体重を目安に、1日4回以上の摂取が筋肥大に最適」と結論しています【3】。体重70kgの方で1回約28g、1日4回で112g。
このMPS刺激を効果的に起こすには、たんぱく質の量だけでなくロイシン含有量が重要です。ロイシンはmTORシグナル経路を活性化するMPSのトリガー。ホエイプロテインはロイシン含有率が約11%と高く、20gの摂取で約2.2gのロイシンが確保できます。卵白プロテインも約8.5%と優秀です。
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100gの卵で何が起きたか — 最新研究
2023年に発表されたTrommelen et al.の研究では、トレーニング後にたんぱく質を25gと100gで比較したところ、100gグループのほうがMPS応答が12時間以上持続し、24時間の筋たんぱく質バランスが有意に改善されたと報告されています【4】。
この研究は「30g上限説」を明確に否定するものであり、多めのたんぱく質摂取でも体は効率的に利用できることを示しています。ただし、1日の総摂取量を1〜2回にまとめるよりも、3〜4回以上に分散するほうが効率的であることは変わりません。
「30g上限説は嘘」と言い切れる理由
この説を「嘘」と言い切れる根拠は複数あります。
- 生理学的事実:消化管はたんぱく質の消化・吸収にほぼ上限がありません。未吸収のたんぱく質が排泄されるケースは、極めて大量(一度に200g超など非現実的な量)でない限り起こりません。
- 進化的観点:人類は長い歴史の中で不規則な食事パターンで生活してきました。狩猟後に大量の肉を一度に摂取しても体が利用できなければ、種として生存できなかったはずです。
- 研究の蓄積:間欠的断食(IF)で食事を1日1〜2回に集約した群と、通常の3〜4回に分散した群で、筋量の維持に有意差がなかったとする研究が複数あります【5】。
ただし「上限がない」ことと「分散が不要」であることは別の話です。1日の総摂取量が同じなら、分散摂取のほうがMPSの効率はやや高いのが現在のコンセンサスです。
たんぱく質の種類で吸収速度は変わる?
たんぱく質の種類によって消化・吸収の速度は大きく異なります。
- ホエイプロテイン:約8〜10g/時間の速度で吸収。摂取後30〜60分でアミノ酸血中濃度がピークに達する「速い」プロテイン。トレーニング直後に最適。
- カゼインプロテイン:約6g/時間。胃酸でゲル化するため吸収がゆっくり。7〜8時間にわたってアミノ酸を供給する「遅い」プロテイン。就寝前に適しています。
- エッグプロテイン:約3g/時間。ホエイとカゼインの中間的な吸収速度。食間や腹持ちを重視する方に向いています。
- 固形食(肉・魚・卵):消化にさらに時間がかかるため、吸収は緩やかで長時間持続します。
吸収速度が遅いほど、1回あたりの大量摂取でもアミノ酸が長時間にわたって供給されるため、MPSの持続時間が延びます。これが、100gのたんぱく質でも12時間以上MPS応答が持続した理由の一つです。
→ プロテインの選び方:「プロテインの種類と目的別の選び方」
→ カゼインとホエイの使い分け:「カゼインとホエイの違い」
1日の摂取パターン — 何回に分けるべきか
MPS刺激を1日を通して最適化するには、3〜4時間おきに20〜40gのたんぱく質を摂取するパターンが推奨されています。体重70kg、目標140g/日の実践例:
- 朝食(7:00):卵 + ご飯 → 30g
- 昼食(12:00):鶏肉 + 野菜 → 35g
- トレ後(16:00):ホエイプロテイン → 30g
- 夕食(19:00):魚 + 副菜 → 30g
- 就寝前(22:00):カゼインプロテイン → 25g
トレーニング後のゴールデンタイム(30〜60分以内)に固執する必要はありませんが、運動後2時間以内にたんぱく質を摂取することで、MPSの応答が最大化されるのは確かです。
間欠的断食(IF)とたんぱく質摂取
16:8や20:4のIFプロトコルでは、食事回数が2〜3回に制限されるため、1回あたりの摂取量は必然的に多くなります。「1回30gが上限」が本当なら、IFは筋肉にとって致命的なはずです。
しかし現実には、IFでトレーニングしている人が筋量を維持・増加できている報告は多数あります。Tinsley et al. (2017)の研究では、8週間のIF + レジスタンストレーニングで、通常食グループと筋量の変化に有意差がなかったと報告されています【5】。
ただし、IFで筋肥大を最大化するには、食事窓の中で最低3回はたんぱく質を含む食事・シェイクを摂り、各回20〜40gを確保することが推奨されます。1日2食で1回に60〜70gを摂るパターンは「無駄」ではありませんが、3回以上に分けたほうが効率は高いです。
→ エッグプロテイン パウダー(食間に)
年齢による吸収量の変化
加齢とともに「アナボリック抵抗性」が高まり、同じ量のたんぱく質を摂取してもMPS応答が鈍くなります。この現象は40代後半から始まり、60代以降で顕著になります。
50歳以上の方は、1回あたりのたんぱく質量を若年者より多め(30〜40g)に設定し、特にロイシンを意識的に確保することが推奨されます。Burd et al. (2013)は、中高年ではロイシンの「閾値」が若年者より高いことを示しています【6】。
ホエイプロテインはロイシン含有量が高いため、中高年のMPS刺激に特に適しています。Nutrimuscleのネイティブホエイ(nWPC)はIngredIa社の原料を使用し、通常のチーズ由来ホエイよりもロイシン含有率が高い特徴があります。
→ 「ネイティブホエイと通常ホエイの違い」
よくある質問(FAQ)
Q. タンパク質は1食30gまでしか吸収されない?
いいえ。体はそれ以上のたんぱく質も消化・吸収できます。「30g上限」はMPSの急性効率に関する初期研究の誤解から広まったものです。最新の研究では100gでもMPS応答が確認されています。
Q. プロテインを1日1回にまとめて飲んでもいい?
吸収自体は問題ありませんが、MPSの効率を最大化するには3〜4時間おきの分散摂取が有利です。1日の総摂取量が同じなら、分散するほうが筋肥大に効果的です。
Q. タンパク質は1食で何グラムまで摂るのが理想的?
体重の0.4g/kgが目安です。70kgの方なら約28g。全身トレーニング後は40gまで増やしても効果があります。それ以上を1回で摂っても害はありませんが、分散のほうが効率的です。
Q. トレーニング後のプロテインは何g飲めばいい?
20〜40gが一般的な推奨範囲です。体重0.4g/kgを目安にしてください。全身トレーニングの後は上限寄りの40gを摂ると、MPSの応答が最大化されます。
Q. 植物性プロテインでも同じ量で効果がある?
植物性たんぱく質はロイシン含有率が動物性より低い傾向があります。同等のMPS刺激を得るには、動物性より20〜30%多めの摂取(25〜35g)が必要とされています。
まとめ
「タンパク質は1回30gが上限」は研究データに基づかない神話です。体は大量のたんぱく質も消化・吸収できますが、MPSの効率を最大化するには1回20〜40gを3〜4時間おきに摂取するパターンが最適です。1日のトータル量を確保しつつ、分散摂取で効率を高めましょう。
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参考文献
- Moore DR, et al. Ingested protein dose response of muscle and albumin protein synthesis after resistance exercise. Med Sci Sports Exerc. 2009;41(3):682-92.
- Bilsborough S, Mann N. A review of issues of dietary protein intake in humans. Int J Sport Nutr Exerc Metab. 2006;16(2):129-52.
- Schoenfeld BJ, Aragon AA. How much protein can the body use in a single meal for muscle-building? J Int Soc Sports Nutr. 2018;15:10.
- Trommelen J, et al. The anabolic response to protein ingestion during recovery from exercise has no upper limit in magnitude and duration. Cell Rep Med. 2023;4(12):101324.
- Tinsley GM, et al. Time-restricted feeding in young men performing resistance training. Eur J Sport Sci. 2017;17(2):200-7.
- Burd NA, et al. Anabolic resistance of muscle protein synthesis with aging. Exerc Sport Sci Rev. 2013;41(3):169-73.

